可愛いモグラとブタでも隠しきれない人間の欲望と本音
TVふうーん録(113)
TVふうーん録(113)
可愛いモグラとブタでも隠しきれない人間の欲望と本音
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テレビ番組を見て感じる「モヤッ」「イラッ」……。でも、やっぱり見てしまう。たまった欲求不満は「TVふうーん録」で解消しましょう♪ 大人ならではのテレビの楽しみ方がココにある! テレビ嫌いなあなたも話のネタにどうぞ。

 これだからNHK Eテレは見落とせん、と思わせる番組が年に1本はある。新聞ラテ欄では超省略形でしか紹介されないようなシュールで秀逸な5分番組もあれば、皆さまのNHK的優先権によって難攻不落の人選を実現させる番組もある。

 

 しかし、昨年10月から私が唸っていたのは人形劇だ。人形劇だが、内容は硬派ドキュメンタリー番組でも人材確保に苦労するようなニッチな人々が出演するトークバラエティ。顔出し不可のゲストは、ブタの人形で可愛らしくデフォルメされ、声は加工されて登場する。

 

 ここに出てくる人々は社会的には「激痛」と分類されるような人だったり、身元は明かせないけれども稀有な体験を真摯(しんし)に、そしてフランクに語ってくれる人だったりする。貴重な体験を根掘り葉掘り聞き出すのがMCのふたり、南海キャンディーズの山ちゃんこと山里亮太とYOUだ。根掘り葉掘りということで、ふたりはモグラの人形に。これまた可愛らしい。NHKの文化遺産でもある人形劇が、まさかこんな形で脚光を浴びようとは。「ねほりんぱほりん」という番組だ。

 

 一昨年にパイロット版があったが、不覚にも見逃した。これが好評だったようで、昨年10月にレギュラー化。タイトルは「はほりん」を「ぱほりん」に変えた。同一タイトルの番組があったらしく、パクリと罵られないよう、ロゴの「は」を「ぱ」と読むのだと言い張る。

 

 画面は見紛うことなくラブリー&ファンシー。フワフワな布製のブタやモグラの人形だもの。しかし、しゃべる中身は、とにかくゲスいモノが多い。民放局が喉の奥から手を伸ばして欲しがるような内容でもある。

 

「偽装キラキラ女子」では、関西在住の地味な事務職女性が「港区在住セレブOL」のフリをして、偽装した日常をSNSにあげて楽しんでいるという内容。すべて嘘。炎上ネタも鋭意仕込んで承認欲求を満たすという。

 

「元薬物中毒者」は覚醒剤使用経験のある女性が登場。明るく楽しく体験談を語りながらも「今でも手を出さないという自信はない」と素直に吐露。よりリアルだ。

 

「ハイスペ婚の女」では、東大卒以外は人間じゃない、と断言する女が登場。が、東大卒の夫とは愛のない状態で、自分は不倫中だと語る。他にも「ナンパ教室に通う男」「整形する女」「元国会議員秘書」など、興味深い人材のオンパレードだ。

 

 MCも攻めの姿勢でツッコミを入れるので、満足度が高い。また、MCの反応と感性はかなり信用できる。ゲストに実際に会っているので、言葉や反応でゲストがどんな人物か想像できるわけだ。鼻つまみ者にはそれなりの嫌悪感、まっとうな人には同意と礼賛。この番組の勝因は間違いなく、MCふたりの軽妙なゲスの勘繰り感、心に闇を抱えた人を躱(かわ)す才能である。

 

 また、人形の再現性の高い動きや衣装も秀逸。人形製作と人形操作のスタッフに拍手。ゲストの人となりをしっかり想像できたよ!

 

 なぜ今になって書いたかというと、3月で終了してしまうからだ。ぜひというか、必ず復活させてほしい。

 

 

※「ねほりんぱほりん」(NHK Eテレ、水曜23時〜)

※「週刊新潮 2017年3月16日号」掲載

プロフィール
吉田潮
よしだ・うしお/テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビ番組はほぼすべて視聴している。 公式HP http://yoshida-ushio.com/