手練6人が大集合で興奮のテレ東深夜ドラマ
TVふうーん録(109)
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手練6人が大集合で興奮のテレ東深夜ドラマ
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テレビ番組を見て感じる「モヤッ」「イラッ」……。でも、やっぱり見てしまう。たまった欲求不満は「TVふうーん録」で解消しましょう♪ 大人ならではのテレビの楽しみ方がココにある! テレビ嫌いなあなたも話のネタにどうぞ。

 東京に住んでいてよかったと思うこと。車がなくても電車でどこへでも行けること。夜でも街が明るいこと。人が多くて、程よい無関心と不干渉が成立すること。そして、テレ東のドラマを観られることだ。

 

 今期のテレ東ドラマも攻めの姿勢だ。他局ならやらない・できない・手を出さない企画をバコバコと実現。「またやる? まだやる?」と視聴者も出演者も思っている「3匹のおっさん」もシーズン3に突入。ただし、私が心を奪われたのは6人のおっさんだ。50〜60代の脇役俳優6人を揃えた「バイプレイヤーズ」である。

 

 毎クール必ずどこかのドラマに登場している大杉漣、もはや主演クラスの遠藤憲一、裏社会コワモテ系を卒業し、インテリも気弱父も健啖家もこなす松重豊、6人中で実は最も二枚目の寺島進、ライブ脱糞が未だに尾を引く奇人変人枠・田口トモロヲ、そして日本一のバイプレイヤーである光石研。まず、この人選のセンスの良さに痺れるし、それぞれが自分を演じるという構造も面白い。「世間一般が抱くイメージの自分」を演じる背徳感が楽しそう。

 

 一応、物語はある。役所広司主演、チャン・イーモウ監督ドラマの出演オファーが6人に舞い込む。「七人の侍」リメイクと話もデカイ。デカイのだが、発注元が中国の動画配信サイトと、かなり怪しい。しかも監督から謎の要望が。6人で3か月間共同生活をして、絆を強めろという。訝りながらも、おっさんたちわらわら集結。朝食時には業界裏話から脇役あるあるまで、おっさんたちがキャッキャ話したりして。そのキャッキャ感、タラレバ娘よりリアリティがあるかも。

 

 ただし、裏があり、年長者の大杉に謀(はかりごと)があるという構図だ。10年前に同じメンバーで自主映画を撮ったものの、失敗に終わった経験が絡んでいる。それぞれが演じるのは、繊細で面倒くさそうな遠藤、家事全般得意だが意外と無神経な松重、粗野でべらんめえでてやんでえな寺島、わかりやすい変態風道化の田口、共演者に惚れる女好きの光石。男子ソーシャルを彩るためには、多少の嘘と過剰も必要。

 

 冷静に考えてみれば、おっさん6人テラスハウス状態のいったいどこが面白いのか。好きな俳優が一堂に会した、というだけで興奮しているのではないか?

 

 おそらく「虚実皮膜」ってやつだ。現実と虚構の間に、芸の真実があると信じたいのだ。どこまでが本音でどこからが演技か、境界線を引きたいと思ってしまうが、それこそ野暮であり、この6人だからこそできる芸を堪能すればよいわけで。

 

 そんな中でもやはりイチオシしたいのが光石だ。第3話の不倫騒動で右往左往する光石が本当にいとおしかった。勃起する喜び、求められて浮かれるぬか喜び、やっちまった罪悪感、キャリアを失う不安、安堵の涙、友達の大切さ、反省と新たな決意。あれはねぇ、不倫がバレた経験のある人にとっては、ぐっとくる演技だったと思う。ぐっときたよ。この後もぐっとくる回が必ずあるはず。だってこの6人だもの。無条件で信じる。

 

 

※「バイプレイヤーズ〜もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら〜」(テレビ東京、金曜24時12分〜)

※「週刊新潮 2017年2月16日梅見月増大号」掲載

プロフィール
吉田潮
よしだ・うしお/テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビ番組はほぼすべて視聴している。 公式HP http://yoshida-ushio.com/