芸達者を揃えてシーズン4でも「失敗しないので」
TVふうーん録(102)
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芸達者を揃えてシーズン4でも「失敗しないので」
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テレビ番組を見て感じる「モヤッ」「イラッ」……。でも、やっぱり見てしまう。たまった欲求不満は「TVふうーん録」で解消しましょう♪ 大人ならではのテレビの楽しみ方がココにある! テレビ嫌いなあなたも話のネタにどうぞ。

 やっぱ強いな、テレ朝の「ドクターX」は。物語の基本軸は変わらず、方向性に目新しさは一切ないのに、役者陣の小競り合いが待ち遠しい。そろそろ飽きるかと思っていたのだが、杞憂に終わる。新メンバーも加わり、さながら顔芸大会。あるいは、瞬間リアクションでいかに爪跡を残すか。

 

 今回は、鉄壁の御意軍団に焦点を合わせる。米倉涼子のイケてる女子モードシーン、踊る銭ゲバ・岸部一徳は端に置いといて。もうさ、絵も大渋滞だよ。狭い紙幅に手練(てだ)れ大集合だもの。

 

 まず、なんといっても台本を超えるアドリブ力の西田敏行。あれ、たぶん台本にないよね? 院長室シーンの隙のなさ。戦場だね。満を持して投入された泉ピン子も「橋田壽賀子仕込みの女ドラマ」モードでは太刀打ちできず。男社会だね。

 

 外科部長に東京生まれ東京育ちのエリート&女好きでイケ好かない吉田鋼太郎、内科部長に北国育ちの吝嗇(りんしょく)家(か)・生瀬勝久。間合いと瞬間芸が必須の伏魔殿(院長室)にて、怪物・西田に負けず劣らず、渾身のリアクション。キャラ分けも完璧ね。

 

 その配下も物語上でうまいこと暗躍している。過去、都落ちした鈴木浩介は華々しく復帰するも、超速で窮地に追い込まれる。そこを盟友の勝村政信に救われて、と男の友情も描かれる。

 

 外科メインの物語で、どう考えても不利な内科医たちは、地方出身者の結束を固めるというコンプレックスアピール作戦に。日和見ボスの生瀬はダントツ顔芸&リアクション大賞だが、部下の長谷川朝晴も地味ながら、生瀬の顔面リズム&不意打ちに俊敏に反応。

 

 そして、アメリカ帰りのスーパードクターという役柄なのに、いいところがひとつもない滝藤賢一。院内の権力に阿(おもね)らず、御意も言わず、成功も活躍もせず。米倉にけちょんけちょんに罵られても耐えるのみ。

 

 その芸達者たちに、さらに過酷なシーンを設けた制作側もすごい。第7話では院内回診シーンで日体大レベルの集団行動をやらせたのだ。あれ、2列目が相当難しい。そして2列目までが役者陣(一時停止で何度も確認した。微妙なズレで乱れたのも役者陣だった)。高視聴率にも決して甘えないテレ朝。いいね。

 

 ただし、シリーズ化すると、各回の脚本の完成度にバラつきが見えてくる。これはテレ朝ドラマの宿命。個人的には今期は第3話が面白かったと思っている。

 

 吉田鋼太郎の元不倫相手である松下由樹が登場した回だ。過去の手術ミス隠蔽のために500万を用立てた吉田に対して、逆に松下が口止め料として2000万をくれてやるというオチ。「男に捨てられた女がもれなく不幸になると思ってない?」のセリフに痺れた。むしろ女のほうがクズ男と付き合った黒歴史と人生の汚点を唾棄したいのだと。この回はうまいなと唸った。

 

 ドラマは基本的に設定と脚本が肝だと思っているが、ドクターXは別モノ。役者が切磋琢磨して、競って爪跡を残そうとする「俺が俺が!」の部分が功を奏しているのだと。負けず嫌いの妙。それを観るのが楽しみ。

 

 

※「ドクターX〜外科医・大門末知子〜」(テレビ朝日系、木曜21時〜)

※「週刊新潮 2016年12月22日号」掲載

プロフィール
吉田潮
よしだ・うしお/テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビ番組はほぼすべて視聴している。 公式HP http://yoshida-ushio.com/