いまさら感ムンムンなのに〝まさか〟でハマってしまった家政夫モノ
TVふうーん録(100)
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いまさら感ムンムンなのに〝まさか〟でハマってしまった家政夫モノ
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テレビ番組を見て感じる「モヤッ」「イラッ」……。でも、やっぱり見てしまう。たまった欲求不満は「TVふうーん録」で解消しましょう♪ 大人ならではのテレビの楽しみ方がココにある! テレビ嫌いなあなたも話のネタにどうぞ。

「え? いまさらそのネタで勝負する?」と最初から訝しんだドラマがある。「家政夫のミタゾノ」だ。

 

 ベースにあるのは、テレ朝の土曜ワイド劇場人気シリーズ「家政婦は見た!」。市原悦子主演で、テレ朝が生み出した不朽の名作である。これを日テレがうまいことパクりながらも、松嶋菜々子主演でまったく別の味付けで大ヒットしたのが「家政婦のミタ」。悔しさのあまりにとち狂ったか、テレ朝はよりによって米倉涼子主演で新作「家政婦は見た!」を制作。暴挙か酔狂か。自局の不朽の名作を汚してしまったのだ。

 

 これに懲りて、もう二度と着手しないと思っていたら、まさかのミタゾノである。そのしつこさに、感服。

 

 初めはそんな揶揄の気持ちも込めて、斜めに観ていたのだが、うっかりハマってしまったので書くことに。

 

 主演はTOKIOの松岡昌宏。私の印象は「マッチョ・兄貴・サウナ」である。深い意味もあるのだが、それはさておき。そんな松岡が女装して、家政夫のミタゾノとして暗躍するという物語だ。家事全般のスキルが高く、腕力も脚力も洞察力もハイレベル。時折見せる筋肉ワザも、ドラマのスパイスになっている。

 

 何が新しいって、誰が見ても明らかに女装の松岡が、派遣先ですんなりと受け入れられているところである。物語の進行上、そこで引っかかるといちいち面倒くさいからスルー、ということなのだが、逆にそれでいいんじゃないかと思う。性別も容貌も関係なく、仕事をきっちりしてくれる人を評価する。正しいなと思った。

 

 彼が所属する「むすび家政婦紹介所」の面々も、なぜ松岡が女装するのか知らない。松岡の素性は、所長の余貴美子だけが知っているのか、そこらへんも謎である。警察か公安か探偵か、あるいは国税庁査察部か。一度だけ男装の松岡も登場したが、そのとき私は、松岡の所属に興味がないことを悟った。ごく普通に「職業上、女として振る舞うほうが有利だから女装する」でいいんじゃないかと。

 

 そして、松岡と組まされる家政婦役の清水富美加がめちゃくちゃカワイイ。もともと演技力が高いと認識していたが、ちょっとした仕草にコメディエンヌの妙技を感じる。基本は困惑&驚嘆。表情七変化は、手塚治虫や藤子不二雄の漫画に出てきそうな顔なのだ。「ぷんすか」とか「ぽくぽく」とか「ふがふが」という擬音が聴こえてきそうな顔ね。

 

 毎回、富裕層の家庭で起こるいざこざを、松岡が解決していく。解決というか、家族に問題点を認知させる方向へ。悪戯するガキは威嚇し、頑固で夢見る年寄りには真実を暴露し、金目当ての女にはすかさず金銭も要求する。ただし、単純な正義の人ではない。後妻業の女や泥棒に優しい一面も。

 

 劇中で松岡が家事の裏技を伝授するコーナーもあるが、そこはどうでもいいや。

 

 松岡の「痛み入ります」の決め台詞が流行るとは思えないし、「ミタゾノ面白いよね」という声も一切聞かない。きっと半年後には詳細を忘れてしまう内容。でも観ちゃう。観ちゃってる。

 

 

※「家政婦のミタゾノ」(テレビ朝日系、金曜23時15分〜)

※「週刊新潮 2016年12月8日号」掲載

プロフィール
吉田潮
よしだ・うしお/テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビ番組はほぼすべて視聴している。 公式HP http://yoshida-ushio.com/