思わず身につまされる石原さとみの「校閲ドラマ」
TVふうーん録(99)
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思わず身につまされる石原さとみの「校閲ドラマ」
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テレビ番組を見て感じる「モヤッ」「イラッ」……。でも、やっぱり見てしまう。たまった欲求不満は「TVふうーん録」で解消しましょう♪ 大人ならではのテレビの楽しみ方がココにある! テレビ嫌いなあなたも話のネタにどうぞ。

 昔、ある女性誌編集者を怖いと思ったことがある。その人は編集部に売り込みやPRに来た人々の名刺を、会った直後に片っ端から破って捨てていた。「こういうのは溜まる一方だから」と。ただし、有名人や権威、大手スポンサーの名刺はきっちり五十音順にファイリング。肩書や会社の規模であからさまに差別していた。「えげつないなぁ」と思った。そういう、大手出版社の編集者のえげつなさがジワジワと伝わってきたのが、「地味にスゴイ!」である。

 

 本当はファッション誌編集部に行きたいのに、校閲部に配属された主人公を石原さとみが元気に演じている。石原は思ったことをそのまんま口にしてしまい、災いとトラブルを招く問題社員だが、その素直さが意外といい方向へ化学反応を起こしていくという物語だ。

 

 当初、石原が「校閲の割に無礼すぎてアクティブすぎて迂闊すぎる」という設定に、エンタメ化しすぎだと思った。キャッキャしたテイスト&荒唐無稽なデフォルメが鼻についたのだ。

 

 ドラマ内では、校閲部の地位が著しく低く、馬鹿にされる部署のようにも描いている。実際には、記者も編集者も社内校閲の手厳しい赤字を怖がっているのに。

 

 しかし、回を追うごとに、出版社の本質というか、編集者の傲慢の描き方のほうが気になり始めてしまった。

 

 文芸の編集者を演じる青木崇高の、「私、作家先生のために仕事してますアピール」にはリアリティがある。主婦ブロガーは馬鹿にして、有名作家には媚びる。名刺を破り捨てる編集者の感覚と同じような気がした。

 

 ファッション誌編集者を演じるのは死んだ目の本田翼。「徹夜明けでスタッフとの打ち合わせをすっぽかす感」や「このモデルはあたしが育てたのよ感」、「多忙で寝ていない自分が大好き感」を低体温で体現。昔はこの手の人が確実にいた。今はもっとドライだけれど。

 

 石原が社員になる前の面接で放った言葉も忘れられない。「ファッション誌の販売部数が下がっているのは、正社員をとらず、雑誌の工程を編プロやフリーのスタッフに任せてしまっているからではないでしょうか」とな。フリーとしては何とも言えないイヤな気持ち。私らのせいなのか……。

 

 出版業界を描くドラマには、時折悲しい真実が垣間見えるから、浮かれて観ていられなくなってしまった。

 

 校閲部の江口のりこが勝ち組、という設定にもなんだか納得。出版社社員はなんだかんだいって地アタマも育ちもよいし、堅実でもある。江口の気品に思わず3点も絵を描いちゃった。

 

 そういえば。石原の衣装を見せるカットがちょいちょい挟み込まれるが、あれはおしゃれなの? 泉ピン子のようにハイブランドを貶(おとし)める破壊力はないが、ふんだんなスカーフ使いは家政婦役の市原悦子っぽい印象も強い。特に、デートやパーティーなど、気合いを入れたときの服は「キュートなちんちくりん」としか思えず。毎度毎度、数パターンも見せられるあの服装で、おしゃれの基準がわからなくなってしまった。ねえ、あれはおしゃれなの?

 

 

※「地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子」(日本テレビ系、水曜22時〜)

※「週刊新潮 2016年12月1日」掲載