〝演技派〟がくすんで見えるほどダメダメフジテレビ
TVふうーん録(95)
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〝演技派〟がくすんで見えるほどダメダメフジテレビ
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テレビ番組を見て感じる「モヤッ」「イラッ」……。でも、やっぱり見てしまう。たまった欲求不満は「TVふうーん録」で解消しましょう♪ 大人ならではのテレビの楽しみ方がココにある! テレビ嫌いなあなたも話のネタにどうぞ。

 以前、フジテレビはドラマの宣伝番組が攻めの姿勢で結構面白かった。そのクールの主演俳優たちを一堂に集め、酒飲んで豪華に宴会をしていた頃が懐かしい。最近はそんな気力も体力も金もないようで萎(しお)れる一方。

 が、新奇性のある番組をやっていたことは忘れずに記しておこう。「天海祐希・石田ゆり子のスナックあけぼの橋」(9月29日放送)である。場末のスナックのママ・天海とチイママの石田が、ゲストを迎えてトークと料理と歌を披露。これ、てっきり秋ドラマの番宣だと思っていた。玉木宏もゲストで登場していたし。

 

 天海の友であるマツコ・デラックス主導、ずん飯尾を使うセンスのよさも光った。しかし……残念なことに、天海主演ドラマと玉木主演ドラマがつまらない。

 

 まず天海主演の「Chef」。さまざまな職種を演じて話題になってきた天海だが、正直飽きた。唯我独尊の鼻持ちならない三ツ星シェフがハメられてリストラされ、学校給食のおばさんに。職種に新奇性を求めているだけで、展開は既視感たっぷり。まるで在りし日の「キムタク扱い」。職種先行、中身は後付け、展開は雑。

 

 天海はもっと複雑な内面を演じられるのに、枠に当てはめちゃう作り方は大損だと思う。個人的には、精神的な鬱屈を抱えたSM風俗嬢とか、虚言癖があって芽が出ない舞台女優とか演じてほしいわ。件(くだん)の番組同様、場末のスナックママ(枕営業は絶対しない)のほうが新鮮だったのではないか。

 

 たとえ駄作でも、脇役陣の熟練技に期待したいところだが、こっちもこっちで既視感が。遠藤憲一と伊藤修子のコンビ芸も定番っちゃ定番だしなぁ。池田成志に一縷(いちる)の望みを託して、もうちょっと耐えてみるかな。

 

 もうひとつ、さらにキツイやつ。玉木宏主演「キャリア」だ。もう始まる前から、日曜日のドラマ激戦区を勝ち抜く気がまったくしなかった。始まっても同じ。

 

 キャリアで所轄の警察署長、ほいほい現場へ行って、民事介入&情で救う。それ、船越英一郎が似たような役をやっていたし。しかも遠山の金さんって、いつの時代だよ。新しさもなければ、逆にギャグに変換できるようなスッポコ感もない。真面目か。クソ真面目か。と、ツッコミしか浮かばない。

 

 真面目に取り組むことは決して悪いことじゃない。でも、どう考えても、視聴率が獲れる内容ではないでしょ。炎上覚悟で新機軸ネタをひねり出す日テレやTBS、人気作ド定番を一気に放出する大博打をかましたテレ朝と比べると、フジは真面目すぎ、守りに入りすぎ、後ろ向きすぎ。いじめられすぎて卑屈になってブチ切れて発奮するならまだしも、小さくまとまろうとしているような。誰にも指摘されないよう、文句言われないよう、揚げ足とられないよう、見つからないよう……って、テレビドラマが誰にも見つけてもらえなくてどうする? 玉木の美しい笑顔からは主演作を間違えた虚しさしか読み取れず。ローリスク・ノーリターンの悪循環に陥ったフジ系ドラマ。優しい気持ちには到底なれないよ……。

 

 

※「週刊新潮 2016年11月3日」掲載

プロフィール
吉田潮
よしだ・うしお/テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビ番組はほぼすべて視聴している。 公式HP http://yoshida-ushio.com/