酒と特番ドラマに興じる秋の夜長
TVふうーん録(92)
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酒と特番ドラマに興じる秋の夜長
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テレビ番組を見て感じる「モヤッ」「イラッ」……。でも、やっぱり見てしまう。たまった欲求不満は「TVふうーん録」で解消しましょう♪ 大人ならではのテレビの楽しみ方がココにある! テレビ嫌いなあなたも話のネタにどうぞ。

 この時期は、特番&2時間ドラマでぼんやり過ごす。ぼんやりでちょうどええ作品が多い。「え? 舘ひろしが初心(うぶ)で惚れっぽいデコトラ運転手(笑)?」「渡辺えりが家政婦か。出しゃばって事件解決しそう」「名作時代劇は軒並みジャニーズが乗っ取ったな」「高畑淳子と渡辺いっけい、山中崇は繁忙期だったわね」などと、ウォッカサワー(最近愛飲しているキリンの本搾り)を流し込みながら、ひとりつぶやいている。

 

 数ある中で原稿に書くべきはどれか。迷った。とりあえず、TBSの定番&人気作「渡る世間は鬼ばかり」(9月18・19日放送)かな。視聴率も悪くないし。泉ピン子といい、角野卓造といい、雰囲気が一発で筆に乗る。絵の描きやすさ、最高。

 

 しかし、相変わらずセリフが長くて息苦しい。「居場所のない老年期の女がどう過ごすか」という興味深いテーマだったのに入り込めず。気づいたらエンディングテーマを歌う天童よしみの漆黒のアイラインを思い浮かべて終了。今回初めて歌詞をつけたそう。へえ。

 

 次。魔性の女子あるいは精神的深爪の役を演じたらピカイチの二階堂ふみ主演「がっぱ先生!」(9月23日放送・日テレ)だ。なんか違う。確かに、二階堂は朝ドラヒロイン系の芋っぽさが残る顔立ちだ。しかし過去のキャリアを見ても、難役ばかり完璧にこなしてきたため、このがっぱ先生役がピンとこない。この手の役なら「演技力がなくてもゴリ押しで主役獲得系」が演じるのが定石ではなかったか。桐谷美玲とかさ。

 

 そういえば、ここ最近の二階堂は日テレのバラエティ番組にも出始めていたっけ。事務所的に「あえてキャリアダウンして大衆ウケを狙う」方向へシフトしたのかなと。凡庸な役も厭わない親近感路線のほうが、結果的には手数と露出が増えるからかな。ふうーん。

 

 最後。テレ東は毎年秋になると本気モードになるんだよね。年末年始よりも傑作を出す確率が高い気がする。昨年も、確か奥田英朗原作の「邪魔」を放送して、上質な作品だったと記憶。

 

 しかも今年は3週連続でスペシャルドラマ豪華3本立てをやると言うので、観てみた。案外ぐっと惹きつけられちゃって、本搾りを何度かおかわりする始末。特に第一弾、宮部みゆき原作の「模倣犯」は2時間超×2夜連続(9月21・22日放送)。あまりに長いので、中だるみするかなと思っていたが、そうでもなかった。

 

 大御所の岸部一徳が現場に立つ刑事役ってのも新鮮だったし、満島真之介の心優しい&情に弱い青年役もよかった。犯人役は今をときめく坂口健太郎(なんかきょとんとした顔)。爽やかなきょとんから邪悪なきょとんへ。人気上昇中で各局から引っ張りダコである。

 

 最も感動したのは橋爪功だ。孫娘を殺された豆腐屋の親父役。真相が解明されても孫娘は帰らない。その冷酷な現実に慟哭する姿が痛々しくて思わず落涙しちまった。まさかあの軽妙洒脱な橋爪に泣かされるとは。

 

 9月下旬放送分の前半戦はこんな感じ。10月頭放送分の後半戦も楽しみである。

 

 

※「週刊新潮 2016年10月13日神無月増大号」掲載