アラサー女の恋と友情とカワイイ宇宙人で深夜にメロメロ
TVふうーん録(90)
TVふうーん録(90)
アラサー女の恋と友情とカワイイ宇宙人で深夜にメロメロ
初回から読む
テレビ番組を見て感じる「モヤッ」「イラッ」……。でも、やっぱり見てしまう。たまった欲求不満は「TVふうーん録」で解消しましょう♪ 大人ならではのテレビの楽しみ方がココにある! テレビ嫌いなあなたも話のネタにどうぞ。

 忙しい夏の終わりに、怒り心頭の出来事があった。某新聞社系サイトの仕事だったが、「趣旨に合わない」とのことで原稿がボツ。当然ギャラもなし。この会社には未来永劫近づかないと心に誓う(呪う)。なんてことを怒りに任せてここに枕として書く時点で下品だ、私は。いい機会なので、地球の女は下品で野蛮なのだということを再確認させてくれるドラマを紹介したい。フジの関東ローカル深夜枠でひっそり放映中の「ラブラブエイリアン」である。

 

 アラサー女の住む家に小さな宇宙人が不時着し、しばらく滞在。宇宙人は驚異の能力を発揮し、女たちの恋愛諸事情をゆるくサポートするというコメディだ。

 

 そもそも原作の漫画が秀逸で、言葉に魂と力を感じる。世間の風潮に違和感を覚えたとき、それを素直に口にする人は少ない。たいていは空気を読んで、飲み込んで溜め込んで、心病む。劇中に出てくる女たちは違う。世間への呪詛を爽快に吐き出す。「女子の本音炸裂♪」なんてレベルじゃないから。下ネタ満載だし。

 

 登場するのは若手女優4人。宇宙人が不時着した家に住むのは、調理師でしっかり者の新木優子。おっとり優しげだが、やることはやっている手練れで、芯はしっかり意地悪。美容師の森絵梨佳は超悪舌。男にも女にも手厳しくて口汚いが、かなりの審美眼あり。ゆるふわな外見でモテを意識するも、失敗続きの久松郁実は最も素直。70歳になってもゆるふわを通すと断言。そして職業・検事の太田莉菜。口を開けば下品・酒好き・掃除と料理が大嫌い。でも死ぬほど努力をしてきた経験の持ち主だ。

 

 この4人が時には罵り合い、掴み合い、寄り添って本音を引き出し合う。綺麗事も自己弁護も許さず、女の友情の有難みと痛快さを見せてくれる。

 

 4人のキャラクターが素晴らしいだけではない。宇宙人の言うことがいちいちまっとうで膝を打つ。地球人を野蛮で下品な下等生物とみなして、侵略価値のない星と断定。「男と女の違いばかり気にして、共通項に目を向けない」「陰口叩いて、直接対話しない」とダメ出しを連発するのだ。

 

 さらには、宇宙人の能力で「本音を曝け出す」光線を浴びた人間や家電が、めちゃくちゃ胸のすく暴言や名言を吐いたりもする。

 

 この宇宙人、劇中ではシルバニアファミリーくらいの大きさなのだが、ものすごくカワイイ。ぷくぷくしたテクスチャーに幼児体型。地球を20秒で滅ぼす力を持っているくせに、「NASAには電話しないでください」と平身低頭なのだ。子供に食べられそうになっても、決して怒らない。「この生物が未成熟な状態にあることがわかっているので、短絡的に怒るほど我々は野蛮ではない」とな。ほほう。些末なことで怒り心頭だった自分は下等生物以下だわ。

 

 下品でも野蛮でもゆるふわでも、たとえクズ男に馬鹿にされようとも、地球の女は直感とプライドを大切にしたい。そんな心意気とメッセージをくれる名作だ。フジテレビはこういう作品こそ全国放送にするべきよ。

 

 

※「ラブラブエイリアン」(フジテレビ関東ローカル、水曜25時55分〜)

※「週刊新潮 2016年9月29日号」掲載

 

 

プロフィール
吉田潮
よしだ・うしお/テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビ番組はほぼすべて視聴している。 公式HP http://yoshida-ushio.com/