ノーマークだった唐沢の暴走コメディがまさかの連ドラ化で不安
TVふうーん録(89)
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ノーマークだった唐沢の暴走コメディがまさかの連ドラ化で不安
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テレビ番組を見て感じる「モヤッ」「イラッ」……。でも、やっぱり見てしまう。たまった欲求不満は「TVふうーん録」で解消しましょう♪ 大人ならではのテレビの楽しみ方がココにある! テレビ嫌いなあなたも話のネタにどうぞ。

 普段、観た番組に関して、ノートに書き殴っている。6年間で「テレビ視聴メモ」は12冊目に入った。昨年6月のメモを読み返してみる。「30年ぶりに起きるって。床ずれがすごいはず。褥瘡(じょくそう)なめんなよ。やたら爆発でぶっ飛ばされる唐沢寿明。マギーの女装はリアル。新宿にいそう。テレビじゃなくてHuluで放映するのか……」とある。そう、日テレが放ったスペシャルドラマ「ラストコップ」の感想だ。ほぼ関心がなかったことがわかる。つまりノーマークだったのだ。

 

 それがまさかの連ドラ化。10月スタートに向け、3週連続で「エピソード0」を放映することに。Huluを観ていないので、新鮮な気持ちで挑む。喜々としてノリノリでバブル男を演じる唐沢寿明。しかし、なんだろう、私の中では不安ばかりが膨らんでゆく……。

 

 1985年、若手刑事だった唐沢は、爆風でふっ飛ばされて昏睡状態に。30年後、奇跡的に意識を取り戻し、刑事に復職。バブル期の感覚そのままの唐沢が、平成生まれの若手刑事・窪田正孝を相棒に据え、破天荒に活躍するという物語だ。

 

 このうえないキャスティングではある。あの時代の軽薄さを体現するうえで、唐沢は適役だ。白Tシャツをジーンズにインして、スタジャンを羽織る。あるいはアロハシャツ。今やリゾートホテルの職員しか着ないようなアロハシャツだ。死語や古いギャグを連発し、「空気を読む」という概念がなかった頃の若手刑事を見事に痛々しく演じている。

 

 アクションはすべて昔懐かし昭和風。決めポーズあり、重心は低め。走り去る車にしがみついたり、火が付いたスニーカーでジャンピングキック。要所要所でスタントマンも使っているようだが、なんだかとっても楽しそう。唐沢本人が。

 

 バブルをあざ笑うというメインテーマは完璧に遂行。

 

 また、ちょいちょい細かい仕草で笑いを狙うも、ややクドイ。そこも唐沢らしさが全開で、つい目を細めちゃう(別の意味で)。

 

 もちろん、荒唐無稽なコメディドラマだから、細かいことはどうでもいいのかもしれない。でも、ほんのちょっとのリアリティと説得力が欲しい気もする。

 

 今後、30年間のギャップの憂いは出てくるのだろうか。視聴者が納得のいく整合性のようなものは出てくるのだろうか。それは期待しちゃいけないのだろうか。唐沢の暴走は平成の世にウケるだろうか。連ドラが始まる前から予期不安で満タン。

 

 もしかしたら、既にHuluの放映で元嫁(和久井映見)や娘(佐々木希)との関係をウェットに描いたのかもしれない。テレビの連ドラでは、そこをカラッとすっ飛ばしそうな勢いだ。そのための3週連続おさらい放送、というわけね。

 

 唐沢の目が黒いうち、そして足が上がるうちに、本領発揮できる作品を、という熱意はムンムン伝わってくる。つうか否が応でも押し寄せてくる。画面から。

 

 残念ながら、常識破り&破天荒は死語に。このドラマが今世紀にどう傷跡を残すか。唐沢だけが傷だらけ、で終わりませんように。

 

 

※「THE LAST COP」(日本テレビ系、土曜21時〜)

※「週刊新潮 2016年9月22日菊咲月増大号」掲載

 

プロフィール
吉田潮
よしだ・うしお/テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビ番組はほぼすべて視聴している。 公式HP http://yoshida-ushio.com/