「五輪家族物語」にないリアリティ「闇金ドラマ」の人間の業
TVふうーん録(86)
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「五輪家族物語」にないリアリティ「闇金ドラマ」の人間の業
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テレビ番組を見て感じる「モヤッ」「イラッ」……。でも、やっぱり見てしまう。たまった欲求不満は「TVふうーん録」で解消しましょう♪ 大人ならではのテレビの楽しみ方がココにある! テレビ嫌いなあなたも話のネタにどうぞ。

 民放局がこぞって演出する「五輪選手を支えた家族の物語」に違和感。選手の頑張りに密着するならまだしも、家族の思いが必ず盛られる。他界した祖父母を担ぎ出したり、妻が活躍したのに夫が褒め称えられたり。親も親で、自分たちの写真を印刷した旗を作るとは。無編集の競技そのものと選手自身を観たかったよ、あたしゃー(浅香光代風)。

 

 お仕着せではない、家族のリアリティを描くドラマがあるので紹介する。既にメジャー作品となった「闇金ウシジマくん」だ。もうシーズン3なのね。主演の山田孝之、抜群の裏社会感を醸し出すやべきょうすけ、ディーン・フジオカより二枚目の崎本大海ら、レギュラー陣は盤石。このドラマが素晴らしいのは、闇金に手を出す人々のリアルなクズっぷり、闇社会に陥れられてゆく弱さを、実に丁寧に描いているところである。

 

 そもそもが犯罪集団である闇金業者を、決してヒーローのようには扱わず。金が人を狂わせる様を懇切丁寧に描き、人間の業 (ごう)や家族の呪縛を炙り出していく。今の朝ドラよりも丁寧だよ。

 

 シーズン3ともなれば、登場人物もかなり増量&複雑化。山田以外の闇金業者(高橋メアリージュン&マキタスポーツ)も暗躍するわ、集団詐欺で家族乗っ取りを目論む中村倫也はいるわの大所帯。全員犯罪者ね。

 

 注目すべきは4人。まずは、家族丸ごと騙されていく光宗薫。要領のいい妹は公務員と結婚。自分は仕事も恋愛もうまくいかない。ダメ彼氏に気分屋の女上司、彼氏を寝取る女友達……優柔不断のいい子ちゃんだからこそ人間関係がうまくいかず。行動すべてを謎の占い師に頼る始末(ダサいブレスレットや水を買わされる)。そこが既に地獄の入口。地道に働く20代独身女性への警告ともとれる構成。

 

 もうひとりは、働く気ゼロで生活保護を受けようとする本多力。診断書を振りかざし、弱者を装う怠け者。食べ物を買う金もないのに、オナニー三昧、彼のクズっぷりは劇中で過剰に描かれているが、根っこには「親との断絶」がある。親に頼れない・頼りたくない故に、貧困に陥る若者も少なくない。これも厳しい現実よね。

 

 最後、私が最も気になるのが、売春で糊口をしのぐ母(倖田李梨)と娘(佐々木心音)だ。母はスーパーでパート勤めだが、パチンコ依存症があり、闇金に手を出している。時折自宅で売春するも、稼ぎはすべてパチンコへ。罪悪感ゼロ、他罰的で娘に売春強要する42歳のトンデモ母だ。強(したた)かなクズ母を潔く演じる倖田のお陰でリアリティが倍増。

 

 娘はそんな母と貧困から抜け出したくて、ネットカフェに住むも、金に困って自らも売春。心が不安定で人生に絶望した19歳の娘を、佐々木が繊細に演じている。

 

 他にも、キャバクラにハマッて闇金にがっつり頼る会社員や、未成年を平気で買春する小学校教員など、振り向けばそこにいそうな現実味のある人物が多数登場する。これぞドラマだわ。

 

 映画版は知名度の高い俳優を配するため、やや食傷気味。私が好きなのはドラマ版。末永く続きますよう。

 

 

※「闇金ウシジマくんSeason3」(TBS、火曜25時28分〜、他)

※「週刊新潮 2016年9月1日号」掲載

 

プロフィール
吉田潮
よしだ・うしお/テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビ番組はほぼすべて視聴している。 公式HP http://yoshida-ushio.com/